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 あやまろ工房

『絵のない日記』〜そら猫通信

しのぶべき人もなき身はある時にあはれあはれと言いやおかまし  和泉式部

2014年12月01日

ついていないから笑う


小説はほとんど読まない。なにかきっかけがあれば読む。昔読んだものが急に気になったり、あるいはたとえばこんな場合・・・

「現在執筆中の『マリアビートル』という長編に、七尾という殺し屋がでてくるのですが、堺さんの写真を観ていたら何となくその七尾君の前日譚的な場面が浮かんできたので、書いてみました」
と井坂幸太郎がいう小編「ついていないから笑う」の初出雑誌ということで、「ダ・ヴィンチ 2010年 3月号」をamazonのマーケットプレイスで取寄せたのは退院して後の5月頃だったか。

中古品と謳ってあったが、基本、読めりゃいいのよと頼んだら、ぴかぴか新品同然で付録も丁寧に梱包されてあって、汚しちゃいけないと緊張してしまった。
他の店には、付録なしというのがあってフロクって何よ?と思ったけれど、付いているものは欲しいしーと店を吟味して選んで、よかった。

付録は堺雅人オリジナルフォトカードだった。
なんだ誰だこの妖艶な美青年は!
って度肝抜かれまして、指紋なんかつけちゃ畏れ多いと慄く手でオズオズと飾りましたわ。

井坂幸太郎原作の映画「ゴールデンスランバー」のころで、艶やかな美青年のポートレート裏には、釣りのいでたちで状況がちっとも吞みこめない、顔だけじゃなくて全身にこにこして、アホッいいかげんちったぁ気づけ!と、画面にむかって説教したいほどイライラさせてくれた、けれど憎めないあの青柳くんがいっぱいいるのだった。

堺雅人の千変万化を、あっけにとられながらも味わうことが醍醐味なのじゃ。このあいだの「リーガルハイ スペシャル2」でも、古美門先生なのに突然の美形ショットありましてな、おォ!とにやけましたわ。このギャップがたまらん。
にゃぁ〜

 で、「ついていないから笑う」殺し屋七尾君。これが愛すべきしょぼくれっぷりで。
ラストでは、一緒になって苦笑いするしかないのだけれど、そのときにはすでに七尾君のファンになっていて軽妙な語り口のこの小編がすっかり気に入ってしまった。

もともと堺さんの写真が導き出したストーリーとはいえ、ストーリーと共に配された写真は被写体堺雅人以外の誰でもないのに、レイアウトが洒落ているのも手伝って、読み進めているうちにすっかり、ここに写っているのが七尾君だ、なるほどこんな人物なんだね、と納得してしまった。素敵なマジックである。

写真撮影は江森康之。特集ページでのそれぞれの写真に物語を感じさせられたので、興味をもって調べてみたら映画のスチール撮影からキャリアを始めたそうだ。いろいろな場で活躍中で多くの画像がみられた。いずれも物語を、あるいはなにか起きそう?という雰囲気を感じるものだった。

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「文・堺雅人Aすこやかな日々」の裏表紙

撮影はその江森康之さん。
電子ブックで読んであったのに、本屋をのぞいた時、あぁこれだねェと手に取ってみたとたんレジへ向かっていたのは、この裏表紙のせいである。こういうのを手元に置かないでなんとする。
電子ブックは安い分こういった何気なく大切なところが削られているのだと知る。


この夏暑いさなか外出して、用事を済ませようやく帰りのバス停にたどり着いたら、3分前にバスは行ってしまっていた。その時間帯1時間に2本…
 「ついてないネェ」とベンチにすわったら、七尾君の顔が浮かんだ。なんだか楽しくなって待ち時間も苦にならなかった。

ついていないから笑う… 困ったときの呪文に使えるなぁと思った。
顰め面で暮らすより、いい男の幻影付きの呪文でにっこりするほうがいいでしょ。

何かとしんどい人生をやり過ごすための呪文として
「さてもよいこと二度ないものよ」
というのも愛用している。心理学者の河合隼雄先生の著作中で出会った。
長年愛用の呪文に
「想像や憶測に比べたら、実際のなんと単純で気休めとなることか」
というのがあって、リルケの「マルテの手記」で拾い出した。ちょっと気合を入れて事にあたらなければならない時の勝負呪文にしている。


本は増やしたくない。けれどしばらくしてから「マリア・ビートル」が紀伊國屋の電子ブックにあるのをみつけたのでダウンロードして読んでみた。紀伊國屋はアプリがKinoppyって、かわいいじゃないか 

痛快でした。
推理、サスペンス物というのは人が殺されないと始まらないというのが嫌なのね。しかし、これだけあっけらかんとテンポよく気の効いた語り口で進められると、こんな奴ヤッチマエ! とすっかりのめり込んでしまった。
新幹線のスピードの変化とか車両や駅の描写が、乗車している気分になって心地良い。
取り澄ました王子をも唖然とさせる七尾君のついていなさ加減。
線路は続くよどこまでも、いや、仙台までだったけど。そのあとがまた・・・
おつかれさま

「ついていないから笑う」も併録されているが、写真はついていない。
「ダ・ヴィンチ」ばんざい


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天道虫





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よかったな!(byゴン隊長)




posted by そら猫@あやまろ工房 at 20:39| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする